ブラック企業ってなぜ潰れないの?倒産せずに存続する理由はなに

社会

私自身、過去に火を見るよりも明らかな労働基準法違反を犯していたブラック企業で働いていた為か、常々「なぜにブラック企業は潰れんのだ」という疑問を抱いています。

ちなみに、私がブラック企業で働いていた頃の話は以下の記事で語っています。気になる方は拝見してみてください。
どこがブラック企業だ馬野郎!お前はまだまだ甘ちゃんだぜ!とか思われるかもですが、私にとっては立派なブラック企業でした。


で、本題に戻りますが……
そもそも、私が「なぜブラック企業は潰れないのだ」と思うのは、単純なブラック企業への私怨みたいなものなので(なんで潰れねぇの?潰れちまえよあんなもん!的な感じです)、正直疑問というほどのものではありませんでした。

ただ、よくよく考えるブラック企業なんて人は集まらないし、例え集まったとしても直ぐに辞めてしまう人が続出するのは必然。おまけに労働基準法にも違反しているのに、なぜ潰れないのか?なぜ倒産せずに存続する事ができるのか?という純粋な疑問が生まれました。

という事で今回は、なぜブラック企業は潰れないのか?についてを調査し、その結果をまとめてみました。

実は倒産したブラック企業もいくつかある

ブラック企業はなぜ潰れないんだ!とは言っても、当然ながらブラック企業が倒産していないという訳でもありません。

2018年には、8,235件もの企業が倒産しており、このうち労働基準法を無視するブラック企業も当然ながら存在します。
ソース:東京商工リサーチより(https://www.tsr-net.co.jp/news/status/yearly/2018_2nd.html)

例えば、株式会社イー・クライシスという会社。
この会社は、ブラック企業大賞実行委員会から「この会社の研修は虐待だぜ!」と言わしめた過酷な研修内容が原因で、何かと知名度を上げていました。

その研修内容は、例を挙げれば「土壌マラソン」
これは、新入社員同士でチームを作り、土嚢を背負わせて長距離のマラソンを強要。最下位のチームには夕飯を与えられないという仕打ち。

他にも、新入社員に穴を掘らせて、一定まで掘り進めたあたりで穴を埋めさせる。当然ながら穴を掘る事に理由はなく、作業が遅かったら夕飯が与えられないという罰が与えられる「穴掘り競争」が挙げられます。

この研修の内容から見て分かる通り、イー・クライシスは「労働者(新入社員)の身体の安全が確保されていない」として、明らかな労働契約法違反を犯している事が分かりますね。(労働契約法第5条には「会社は労働者の生命、身体等の安全を確保しつつ労働できるよう配慮しなきゃ駄目だぜ!」っていう条文がある為です。)

要は「ブラック企業」だったという事です……

確かな情報ではありませんが、この会社で働いていた人の話によれば、研修に耐えられず辞めてしまう者も多く、終電で帰れなかったものがほとんどだったそうです。(他にも、イー・クライシスにはブラック企業らしいお話があるのですが、何れも明確な情報ではなかったので、ここまでにしておきます。)

で、この株式会社イー・クライシス。2018年1月をもって倒産しました。

この会社が倒産した根本的な理由が「ブラック企業」だったから……かどうかは定かではありませんが、この事から分かるのは「ブラック企業は潰れない」ではなく、「ブラック企業は一応潰れてはいる」という事です。

ブラック企業が倒産せずに存続できる理由

前項目では、「潰れているブラック企業も結構あるよ!」みたいな事を書きましたが、当然ながら存続し続けるブラック企業も存在しています。

中には、日本を代表する大手企業がブラック企業という例も多数挙げられます。某大手飲食会社とか、某大手広告代理店とか、数々の違法を犯しながらも成長を続け、巨額の利益を得ているブラック企業なんて沢山ありますよね。

過酷な労働によって健康面・精神面に多大なダメージを与え、労働者の命を奪ったブラック企業だってあります。そんな大事を起こしておきながらも普通に営業を続けられるブラック企業だったあります。

今回の疑問は正にここ。なぜブラック企業なのに倒産するどころか成長する企業が存在するのか。大手でなくとも、なぜ存続する事ができるのかというポイントです。

実際に調査してみたところ、ブラック企業が潰れずに存続できる疑問に対し、「絶対にコレだ!」と答えを絞る事はできませんでしたが、「確かに」なと思える結果も得られましたので、今回はその点を以下にまとめてみました。

ブラック企業でも、辞められない人は多いから

「ブラック企業ならなぜ辞めない?」と疑問を抱く人は何かと多い。確かに、会社を辞めるのは本人の自由。嫌なら辞めればいいというのが一般的な意見と言えるでしょう。

実際に「ブラック企業だ…さっさと辞めよう」と直ぐに決断できる人は多くいます。私自身、過去に努めたブラック企業を僅か1ヶ月で退職しました。

しかし、これが全員できるか?といったら、そうでもないのです。

例えば、周りと他を比較してしまいがちな人や、ブラック企業に勤めている自分よりも過酷な環境下で働く人を知っている人。こういう人はブラック企業で自分は苦しんでいると分かっていながらも「あいつよりはマシだ」「ここで辞めたら自分は周りと比べて底辺な人間になってしまう」という心理が働いてしますのです。これを「下法比較」と言ったりします。

この心理が働きやすい人は、会社を辞めて無職になってしまう事が何よりの屈辱に感じやすく、辞めると言う決断がつきにくい。はたまた、自分よりもヤバいブラック企業で働いている奴がいるという安心感が支えとなってしまい辞められないという状況に陥ります。

勿論、ブラック企業を辞められない理由はこれだけではないですよ。死ぬ気で就活頑張ってやっと内定もらえたっていう経緯がある人とか、ブラック企業から抜け出したい気持ちは強いけど、自分が辞めると周りがより一層苦しんでしまうから辞められない優しい人とか、挙げればきりがありません。

で、結局何が言いたいかと申しますと、ブラック企業が潰れない理由の一つとして「ブラック企業でも辞められない人いるから」が挙げられるという事です。

利益を出すならブラック企業の方が有利だから

突然ですが、AさんとBさんでじゃんけんをしたとします。BさんはAさんが手をだした1秒後に手を出します。さて、どちらが勝つでしょうか?

当然、後出ししたBさんが勝ちます。でもBさんは「後出し」というルール違反を犯しました。このBさんこそ、正にブラック企業の在り方です。

会社は「労働基準法」などの法律、要はルールに基づいて経営しなければなりません。ブラック企業はこのルールを平気で無視しています。なので、労働基準違反を遵守しているホワイト企業よりも利益を出しやすいなんて言われています。まぁ、確かにそうですね。

みんな定時で帰るA社より、みんな終電まで働き続けるB社の方が、稼げるのは必然ですよね。

「残業が多い」「賃金が安い」といった労働者にとっては劣悪な環境は、会社側からすれば利益がでやすい環境なのです。

勿論、世間に「この会社はブラック企業だ!」と認知されてしまえば、その評判が原因で利益をもたらす消費者(お客)が離れてしまうという事はあり得ます。ただ、基本的にブラック企業だと世間一般的に知られる会社なんて少ないですし、残業やパワハラなどの社内事情を気にする消費者もそう多くはないでしょう。

その結果、「ブラック企業の方が利益を出せる」という悲惨な結果が生み出されてしまうのです。

その劣悪な環境によって起こりうる「人が辞めてしまう」という欠点は、「とりあえず大量採用で社員を振るいにかけて、ブラック企業でも辞められない人をゲットしようぜ!」っていう手口でカバーできます。

労働基準法があるのに、なぜブラック企業は存続できるのか?

ご存知かと思いますが、この世には労働者を守る為の「労働基準法」なんて法律が存在します。

簡単に説明すると「労働者を働かせるなら、最低限これは守れよ!」っていう会社経営におけるルールブックみたいなものですね。一応、国が定めた法律ですから、違反した会社には罰が与えられます。

この国が定めた法律があるのに、なぜブラック企業は存続できるのか?なにを今更って?はい、重々承知でございます。

調べるまでもありませんが、この労働基準法はあまり会社の抑止力になっていないというのが実状です。もっと簡単に説明すると、労働基準法にビビる会社はそう多くないという事です。その理由として挙げられるのが以下のものになります。

労働基準法の罰則は弱い

「違反したら会社ぶっ潰します」みたいな罰則があればいいんですけどね。残念ながら労働基準法には”違反したら会社倒産させますね”という罰則は存在しません。

労働基準法に違反した事で、会社・経営者等に与えられる罰則は以下のものになります。
・1年以上10年以下の懲役 または  20万円以上300万円以下の罰金
・1年以下の懲役 または 50万円のばっきん
・6ヶ月以下の懲役 または 30万円以下の罰金
・30万円以下の罰金

最も重い罰が「1年以上10年以下の懲役 または  20万円いじょう300万円以下の罰金」なのですが、これは労働基準法第5条「強制労働の禁止」にのみ適用される罰則です。

「強制労働の禁止」というのは、暴力、強迫、監禁など、肉体的または精神的な苦痛を与える事で労働者の労働を強要しちゃ駄目だよ!っていうルールです。

ブラック企業によくある「長時間労働」の罰則は「6ヶ月以下の懲役 または 30万円以下の罰金」、残業代未払いの罰則は「30万円以下の罰金」に当たります。

正直、罰則が軽いですよね。これらの罰金は、社員を長時間労働させた上に残業代未払いによって浮いた人件費で十分に賄えてしまいそうです。これは何の抑止力にもなりません。寧ろ「えっ、罰金これだけ!だったらもっと社員を酷使して利益あげようぜ」ってなっているのが現在の日本社会なのです。

労働基準監督署の監視の目が弱い

労働基準監督署で一生懸命働いている方もいるので、あまり悪くは言えませんが、正直言うと労働基準監督署の監督力は弱いと言わざるを得ません。

簡単に説明しますが、会社の労働違反が発覚するまでの流れは
1.労働者が労働基準監督署に相談する
2.労働基準監督署から会社の代表者等に「ちょっと来い」と依頼する。
3.労働基準監督官が会社の代表者等に事情徴収する
4.違反の事実が判明
といった感じです。

まず、「労働基準監督官が会社の代表者に事情徴収する」の時点で、明確な証拠がなかった場合、この時点で証拠不十分とされる実態があります。

例えば、超時間労働があったが会社はタイムシートを管理していないが為に長時間労働の証拠が取れなかった場合。残業代未払いだがタイムカードは定時上りしている事になっている。(社員に定時でタイムカードを切らせ、残業させている)など、このようなケースでは証拠不十分と見なされる可能性が高いようです。

仮に、動かぬ証拠があって労働基準法違反をしている事が判明した場合であっても、それが裁判事に発展して罰則が科せられるというのは稀な事象です。

ではなぜ、労働基準監督署はブラック企業に対してしっかりと罰則などの与えて、劣悪な実態を抑止しようとしないのか?
これに明確な理由はありませんが、よく言われているのが人的な問題です。要は人手不足です。

2016年時点で、日本で「労働基準監督官」として働くものの数は3,241名です。数百万もの企業数に対してこの人数ですから、ブラック企業一つひとつに罰則を与える対応をするというのは現実的とは言えません。

最後に、この項目は「労働基準監督署の監視の目が弱い」としていますが、これは決して労働基準間が怠けているという訳ではありません。(まぁ、中には怠けてる人もいるかもですが……)
そうならざるを得ない実態があるからです。要はブラック企業が多すぎて、手に負えないって事です。

まとめ

ブラック企業は、ルールを違反しているというだけあって利益を上げやすい企業であるというのは確かです。中にはそうでもしないと存続できない会社もあるでしょう。

また、そんなブラック企業で「辞めたい」と思いながらも、何らかの理由で辞められない人だって多くいます。

これらの理由が総じて、ブラック企業が潰れないカラクリが誕生しているようです。要は、ブラック企業が潰れないのは「辞められない社員に対して過酷な労働をさせて、多くの利益を得てる」からです。

実際にブラック企業が、「潰れないのは社員の人件費削って長時間労働させて利益ガポガポだしてるからやで!!」と語っている訳ではありませんが、普通に考えれば、それが「なぜブラック企業はつぶれないのか?」の答えですよね。

そして、そのブラック企業達の暴走を抑止するはずの労働基準監督署も人手不足などが原因なのか、しっかりと対応しきれていないというのが実態です。

おそらく、大きな法改正でも行われない限り、ブラック企業が消え去る事はないでしょう。悲しい現実です。