胃はどうして胃酸で溶けないの?
普段、私たちが身体の中に取り入れている食物は、胃の中にある強い酸性の消化液である「胃酸」によって消化されています。
この胃酸の強さは、人の肌に塗って放置すれば余裕で火傷になってしまう程の強さだそうです。
それ程、強い酸性を持っているのにも関わらず、一体なぜ人間の胃は溶けずに平気で活動を続ける事ができるのでしょうか?
そこで今回は、胃は胃酸によって溶けないのかを調査し、その結果をまとめてみました。
胃が胃酸で溶けない仕組みについて
胃酸で胃が強いのは、胃自体が強い抗酸化作用をもっているのでは?と考えましたが、実はそうではありませんでした。
どうやら胃は、身体が持ついくつかの機能によって胃酸で溶けない状態を作り出しているようです。
では、胃酸で胃が解けない身体の仕組みとは、一体どのようなものなのでしょうか。
副細胞から分泌される粘液の力
胃の壁を指す「胃壁(いへき)」は、内側から粘膜・粘膜化組織・筋層・漿膜(しょうまく)で構成されており、この内の一つ「粘膜」が胃酸で胃が解けない仕組みを作り出しています。
粘膜は内側から粘膜上皮・粘膜個有層・粘膜筋板・粘膜下層の4つで構成されており、この内の「粘膜固有層」は胃液が分泌される胃腺があり、「粘膜上皮」には胃底腺(胃腺の一種)の入口となる窪みのようなものが無数に存在しています。
胃底腺を構成している主な頚部粘液細胞(副細胞)・壁細胞・主細胞であり、「頚部粘液細胞(副細胞)」は胃を胃酸から守る「粘液」を生成する働きを持つ細胞です。
この粘液がもつ防御能力は強く、まず酸を中和する能力を持つアルカリ性物質「重炭酸イオン」と胃粘膜に吸着する事で表面を覆い、酸からの刺激をブロックする「リン脂質」と呼ばれる成分を含んでいる為、胃壁に胃酸が届くという事はまずありえません。
以上のように、胃は「粘液」と「粘膜」の2つのバリアによって守られているのです。
プロスタグランジンの力
プロスタグランジンとは、少量で生物の生理現象、行動に何らかの特有な作用をもたらす事で身体の働きを調整する働きがある「生理活性物質」の一つです。
体内の各器官・組織に存在しており、胃に対する作用に関しては胃酸分泌の制御作用、胃粘液分泌促進作用などがあります。
以上のような働きを持つプロスタグランジンがある為、胃酸の増えすぎ、または胃粘液の減少によって胃が解けてしまうのを防ぐ事ができているようです。
胃は胃酸で溶けてしまう事もある
常に胃は胃粘膜・胃粘液、そしてプロスタグランジンの働きによって胃酸からの攻撃を防いでくれてはいますが、絶対に防いでくれるという訳ではありません。
何らかの原因が胃酸量増加などを引き起こす事で胃粘膜を傷つけ、胃が胃酸によって溶けてしまう場合があります。
このような症状を「胃潰瘍(いかいよう)」と呼び、胃に穴があいてしまう事もある危険な症状です。
この胃潰瘍は、食べ物を摂取した際、胃にピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)という螺旋状の悪玉菌が感染してしまう事で引きおこる胃粘膜の損傷が一番多い原因。
厄介なことにピロリ菌は胃酸を中和できるアルカリ性物質「アンモニア」をバリアみたいに纏っている為、胃酸によって溶ける事はありません。
ピロリ菌以外にも胃酸過多または胃粘膜現象の原因として、ストレス、暴飲暴食、喫煙、飲酒などが挙げられます。
まとめ
胃は胃酸によって余裕で溶ける器官なのですが、それを胃の内側に存在する胃粘膜、胃粘液が守っているようです。
また、プロスタグランジンとよばれる生理活性物質も働く事で、胃酸の量が増えてしまう事を防ぎ、胃粘液生成を促してくれています。
しかし、身体になんらかの障害が起こると胃酸過多や胃粘膜の損傷が引きおこり、胃酸が胃を溶かしてしまう事もあるんですね。
滅多な事で起こる症状ではないようですが、胃に穴があいてしまうのは相当危険な状態ですので、私も食生活などには注意したいと思います。
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