盗まれたお金は犯人が捕まれば返ってくる?

社会

古くから行われ、現在でも減る事のない犯罪の一つ「窃盗」。

例え必死に努力して稼いだお金だとしても、窃盗に遭えば被害者はただただお金を失い、場合によっては大金を失ってしまう事も。

犯人に逃げられてしまった場合、盗まれたお金を取り返す術はないが、もし犯人が逮捕された場合はお金を取り返す事ができるのではないでしょうか。

そこで今回は、盗まれたお金は犯人が捕まれば返ってくるのかという疑問にスポットをあてて調査し、その結果をまとめてみました。

盗まれたお金は犯人から取り返せるのか?

もしひったくりなどに遭ってお金を盗まれた直後、警察官が近くにいたなどの理由で犯人がすぐに逮捕された場合、盗まれたお金は確実に返ってくるでしょう。

例え犯人が数日後に捕まったとしても、犯人またはその親族が盗んだお金を返せる程の資産がある場合、罪を軽くするといった理由で返金に応じる場合があります。

しかし、もし逮捕された犯人がお金を使い切っており、更に返済能力もないとなった場合は裁判に委ねられます。

刑事裁判ではお金は返ってこない

刑事裁判とは犯罪を起こした疑いのある者が有罪か無罪か、もし有罪だった場合はどれ程の刑罰を与えるかを決める裁判を指します。

この刑罰は、刑法の規定に基づいて定められるのだが、刑法には「窃盗したお金は、被害者に返却する」といった義務が規定されていません。

また、刑罰には「罰金」が存在しており、窃盗の場合は50万円以下の罰金と定められているが、この罰金は国に納められるお金であり、被害者に入る事はありません。

更に言うと、犯人を刑務所で労働させ、その労働によって稼いだお金を被害者の賠償にあてる強制力もありません。

盗まれたお金を取り返す手段は「民事裁判」

民事裁判とは決着の付かない個人間との争いにおいて、裁判所が法的判断で解決を図る裁判をさします。

たとえば「あいつが金を返さない!」とかの争いで、窃盗に遭った被害者が犯人に対してお金を請求する場合も民事裁判に委ねられます。

犯人の窃盗が立証されていれば、民事裁判にて被害者が勝訴し、犯人は損害賠償請求権により、被害者へ盗んだお金の返済を義務付けられます。
(損害賠償請求権とは、損害を受けた被害者が損害を与えた犯人に対し、損害の賠償を求める事ができる権利を指し、被害者が損害および犯人を知った時から3年間この権利を使用しなかった場合、この権利は消滅する。)

ただし、裁判所は「盗んだお金を支払いなさい!」と命令を出すだけであり、裁判所が盗んだお金を犯人から取り立ててくれる訳ではありません。

犯人側および親族に賠償金を払えるだけの資産があれば、裁判所からの命令に従うパターンが多数ですが、もし犯人側が命令に従わず盗んだお金を返さない場合、または盗んだお金は使い切ってしまって賠償金を支払うだけの資産がない場合はどうなるのでしょうか。

犯人側に資産はあるが、支払いに応じない場合

犯人に資産があるとわかっているのに、まったく支払いに従わない場合、盗まれたお金を回収する方法はしつこく催促するか、「強制執行(差し押さえ)」のどちらかが考えられる。

強制執行とは、相手側の預貯金、土地、建物、その他時計や宝石といったものを強制的に差し押さえて現金に換え、それを回収するという方法です。

犯人名義のものであれば差し押さえ対象となり、もし犯人が働いており、勤務先が判明している場合は給料の差し押さえを行う事も可能。

犯人に資産があるのであれば、強制執行を恐れ、この時点で盗んだお金の支払いを行うパターンが多いが、裁判所から命令が出ているのにも関わらずお金を払わないのは、お金を持っていないというパターンがほとんどだそうです。

犯人側に資産もなく、支払い応じられない場合

よく「盗まれたお金は返ってこないと考えた方がいい」なんて言われているのは、犯人側に資産が全くといっていい程ないパターンが多いからです。

確かに、罪を犯すというリスクを背負ってまでお金を盗むという事は、お金に困っているという人がほとんどで、その他の動機の数パーセントは愉快犯といったところでしょうか。

犯人側に資産がなければ、差し押さえできるものもないので、そこからお金を回収するなど不可能な話だという事は火を見るよりも明らかです。

また、犯人に多少の収入(生活保護費など)があったとしても、日本国憲法第25条には「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という規定があり、これは犯罪者関係なく日本国民全てに適用されるため、犯人は生活費を削ってまで返金する義務はありません。

要するに、生活ギリギリの収入しかない犯人から盗まれたお金を回収するのは極めて困難という事です。

また、裁判所で勝訴を勝ち取り、犯人側に「お金を返しなさい!」という命令が効力をもっているのは10年間ですので、それ以降は盗まれたお金を請求する事はできません。(一応再裁判で有効期限を延ばす事もできるが、結局お金がかかる為、ほとんどは諦める。)

逆に言えば10年間は窃盗による損害を請求できるので、もし犯人にある程度の収入が見込めるようになれば、その時点で回収可能です。

しかし、長い月日かけてまで犯人に交渉し続ける、裁判をする、弁護士に依頼するといった事を繰り返すと、盗まれた被害者側に依頼や裁判をする多大な費用、そして犯人に交渉し続けられる強い精神力と行動力が必要となる為、大抵の人は「あきらめた方がいい」という考えに至って回収不可能となるのです。

まとめ

盗まれたお金は犯人が逮捕されても返ってこないと言われていますが、必ずしもそうという訳ではありません。

もし犯人に資産があれば、こちらの行動次第で窃盗による損害金を回収する事ができるようです。(一応裁判の費用や弁護士費用も請求できるらしい…)

ただし、犯人に資産がない場合、これは回収が厳しいようです。

もちろん、犯人は盗んだお金を使って返さず自由という訳ではありませんよ。しっかり刑罰をうけて罪を償ってもらいます。

ただ、それだけでは被害者が報われないので、そうなる前に防犯対策をしっかり立てておく事が大切なようです。(私は普段3000円しか持ち歩いていません。)