誰かとさよならする時に手を振るのはなぜ?その意味はなに?

歴史

誰しもが一度はやったことがあるでしょう。誰かとさよならする時に手を振るという行為。

私もおそらく人生で数えきれない程、人に手を振ってさよならした機会がありました。中には辛い気持ちで手を振る事もありました。

ところで、この手を振るという行為。主に誰かと別れる際に当たり前のように行っている行為ですが、一体なぜ手を振るのでしょうか?その意味をご存知の方はそう多くないと思います。

そこで今回は、誰かとさよならする時に手を振るのはなぜか?その意味などについてを調査し、その結果をまとめてみました。

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さよならする時に手を振る意味

結論から言うと、誰かとさよならする時に手を振る行為には「神様を呼び寄せる」という意味があるようです。

この手を振ると言う行為の由来は、日本に仏教が伝わる前から行われていたとされている日本古代の儀式「魂振り(たまふり)」から来ています。

魂振りとは、簡単に説明すると「空気を震わせてる事によって神様の魂を奮い立たせ、こちらに呼び寄せる」という事を目的として行われる儀式です。

現在でも、神社の神主さんが紙または布を切って木の棒にくっつけたような「御幣(ごへい)」と呼ばれる道具を左右に振ってお祓いする姿が見られます。これがまさしく魂振りです。

御幣(ごへい)

「空気を震わせる事」が魂振りの基本動作となりますので、儀式の形は様々です。

例えば、神社でお参りするときに両手を「パンパン!」と打つ行為や、鈴を鳴らす行為も魂振り。そして今回の主題でもある「手を振る」という行為も、この魂振りの儀式の一つです。

ではなぜ、「神様を呼び寄せる」という意味がある手を振るジェスチャーを、誰かとさよならする時に行うのか?次はその点について迫っていきたいと思います。

さよならする時に手を振るのはなぜ?

時代は遡り奈良時代末期(780~794年くらい)。このころに完成したのではないかと言われている日本最古の和歌集「万葉集」には以下のような歌があります。

白波の 寄そる浜辺に 別れなば いともすべなみ 八度(やたび)袖振る

「白波が打ち寄せるこの浜辺、故郷から遠く離れて愛する人と別れてしまいもうどうしょうもない。だからせめて何度も手を振って思いを伝えよう」という意味の歌ですね。

この歌の最後にある「袖振る」は、まさに現代で誰かとさよならする時に行われる手を振るジェスチャーを指しています。

昔の普段着は着物が主流でしたので、手を振ることで揺れる袖から「袖振り」なんて呼ばれていたようです。要は、この時代から「別れ」が関係するケースで手を振るというジェスチャーが行われていたという事です。

では、なぜ手を振っていたのかという点ですが、これは、この時代の背景が大きく関係していきます。

今現在では、誰かとさよならしてもいずれまた会えます。しかし、それが大昔ともなれば「さよなら」は即ち、「今生の別れ」となってしまう可能性が高かったのです。

当然ながら交通機関などはない当時、険しい山道を長期間かけて歩いて目的地へと向かう危険性、はたまた戦へと出ていく人との別れ等々。

「もう家帰るね。バイバーイ」と言って手を振るのとはわけが違います。これから命がけで旅立つ人に対して「さようら」と手を振るのです。

その為、これからさよならする人に対して神のご加護があるよう袖を振り、神を呼び寄せる「魂振り」と同等の意味を持つ「袖振り」を行ったとされています。

また、袖振りには「空気を震わせる事で相手の魂を奮い立たせ、こちらに引き寄せる」という意味もあり、この事から「体は離れても、あなたと私の魂はずっと一緒です」というメッセージが込められていたとの事。

この袖振りの名残が、現代のさよならする時に行う手を振るジェスチャーに繋がっています。

まとめ

誰かとさよならする時に行う「手を振る」という行為は、日本古来の「空気を震わせてる事によって神様の魂を奮い立たせ、こちらに呼び寄せる」事を目的とした儀式「魂振り」が由来になっています。

手を振る事で空気を震わし、神を呼び寄せ、「旅立つ相手に神のご加護があるよう祈願する」という意味を込めて昔は用いられていました。これが受け継がれてきた事によって、現在の日本でもさよならする際に手を振る文化が残っています。

ちなみに、このさよならする際の手を振るジェスチャー。当記事の内容から分かる通り、日本独自の文化です。海外で行うと失礼なジェスチャーとなってしまう可能性がありますので、海外旅行の際、はたまた海外の友人がいるという方は、さよならする時に手を振るジャスチャーを無意識に行わないよう注意が必要みたいです。

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