なぜトランプのスペードのエースだけ柄が大きいの?
全世界的に高い知名度を誇るカードゲームの一つ「トランプ」
皆さんもご存知の通り、トランプには「ハート」「スペード」「ダイヤ」「クラブ(クローバーとも)」の4種類の柄が各13枚、計52枚のセットとなっていますよね。(ジョーカーは除く)
そんなトランプなんですが、つい最近、私がトランプマジックの動画を見ていると、ある疑問が浮かんでしまいました。
それは「なぜ、トランプのスペードのエースって柄が大きいのか?」という疑問です。すべてのエースが大きい柄っていうならなんとなく納得ですが、なぜか「スペードのエース」だけ大きいんです。
そこで今回は、なぜトランプのスペードのエースだけ柄が大きいのかという点について調査し、その結果をまとめてみました。
トランプのスペードのエースだけ柄が大きくなった経緯
時代は遡り、時代は11~13世紀くらい。諸説ありますが、この時代に東洋からヨーロッパへとトランプが伝わり、これがトランプ流行のきっかけとされています。
その当時のトランプは、主に「賭博」の道具として使われていました。
現在もそうですが、賭博は「副次的に争いへと発展する可能性」「いかさまによる詐欺行為が流行する可能性」といった問題点がいくつか存在している為、法的に禁止または制限が設けられているケースがほとんどです。
この賭博による問題点は、トランプが流行り始めた時代のヨーロッパでも変わりありません。
その為、トランプでの賭博を抑止しようとヨーロッパ各国では、様々な防止策が打ち立てられました。
イギリスにて、トランプが課税対象となった
トランプがヨーロッパ各地で流行り始めて時は経ち17世紀。
未だ流行が収まる事のないトランプの賭博を抑止する目的として、トランプを輸入する際に発生する「輸入税」の他、イギリスでは国内で生産されるトランプに対しても税金を導入しました。
要は「印紙税」です。トランプを制作していた当時の製作所に対し「トランプ1パッケージ作るごとに国へ幾らかの税金を納めてね」という形で税金を課せたのです。
導入の目的は、先述した「トランプによる賭博問題の抑止」
その他、17世紀はイギリスで戦争が絶えなかったという時代背景から、戦争にが原因で起きた財政難を乗り切る為の対策、および戦費を調達する為の目的として流行していたトランプに税金を課せたと考えられています。
そして、「このトランプは税金しっかり払ってるよ」と、税金が支払い済みである事を証明する為、スペードのエースには納税証明印が押されたのです。これが、現代のトランプのスペードのエースだけが大きい柄になったきっかけとなります。
なお、スペードに納税証明印が押されていた理由は、トランプの最初の並びとして一番上にあったのがスペードのエースだった為です。
この当時、まだジョーカーが存在していないので一番上はスペードのエースになります。今現在のトランプも、新品を開封して表向きにし、ジョーカーを取り除けば、ほとんどは一番上にスペードのエースがあります。
スペードのエースの納税証明印が徐々に大きく複雑に
「トランプに税金(印紙税)を課せる」という事は、製造者はトランプを製造する度、1パッケージ分に定められた額のお金を国に納めなくてはいけません。
これにより、製造者はトランプを売って収益を得るべく、納税分は値上げしてトランプを販売しなければいけない事になりますよね。要は、トランプが以前より高価な値段となる訳です。
となれば、トランプの売上が下がる事は容易に予想ができます。この事態を防ぐ為に、製造者たちはスペードのエースに捺印された納税証明印を偽造し始めました。
トランプに課税された当初、スペードのエースに捺印された納税証明印はそこまで複雑なものではない小さなもの。その為、これを偽造するのは容易でした。
そこで、国側は偽造されないようにとスペードのエースの納税証明印をより複雑に。しかし、製造する側は税金を免れる為に複雑になった納税証明印すらも偽造。だから国側も更に複雑な納税証明印に……
といった形で、スペードのエースに捺印された納税証明印をめぐるいたちごっこが発生してしまったのです。
この結果、スペードのエースに押される納税証明印はより複雑で大きく、偽造しずらいものへと進化を遂げました。
1765年には、スペードのエースに納税証明を捺印する事は廃止され、国の正式な印刷所(日本でいうところの「印刷局」)が印刷した、イギリスの国章をあしらった大きく複雑な柄のスペードのエースが発行されるようになり、それをトランプに入れる事で納税証明の証としました。
現在の「お金」の柄が完成した成り立ちとよく似ています。偽造されないようにと、より複雑で偽造が極めて困難な柄といった様々な対策が組み込まれています。スペードのエースの納税証明印もこれと同じです。
スペードのエースの柄が大きい理由は「納税証明印」の名残
上記の説明を読んでいただいて、既にピンときている人もいるかと思いますが、トランプのスペードのエースだけ複雑で大きな柄になっているのは、トランプが課税対象であった時代にイギリスがスペードのエースに押していた「納税証明印」の名残です。
トランプに対する税金制度は1862年に廃止され、製造者はスペードのエースを好きな柄にする事ができるようになりましたが、多くの業者は多少の柄変更を行ったものの「大きくて複雑な柄のスペードのエース」というのは変更しませんでした。
それが長く受け継がれてきた為、現在のトランプのスペードのエースだけが複雑で大きな柄となっているのです。
ちなみに、トランプは世界的に見て古くから課税の対象とされてきました。
日本でも1902年、主に花札やかるたなどに課せられていた「骨牌税(こっぱいぜい)」がトランプに対しても課せられていました。
1957年には骨牌税が全面的に改正され「トランプ類税」という名称に改められています。(1989年、消費税導入に伴ってトランプ類税は廃止されています。)
まとめ
昔、イギリスにて「トランプ作るなら税金払ってね」という制度が導入され、ちゃんと税金を払ったトランプに対しては、トランプの最初の並びで一番上となるスペードのエースに納税証明印を押していたようです。
今のトランプのスペードのエースだけが大きくて複雑な柄なのは、この納税証明印の名残です。
トランプのスペードのエースだけ柄が複雑で大きい理由なんて、おそらく製造業者の思い付きかなんかだろうと思っていましたが、意外にもその背景には海外の深い歴史が絡んでいましたね。
もし今後、トランプを手にする機会がありましたら、スペードのエースの柄に注目して歴史を感じてみてはいかがでしょうか?
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