将棋の歩兵の裏側はなぜ「と」?その理由や由来は?
将棋はここ近年、対局がネット中継で放送されたり、各地でイベントが開催されたりで、何かと注目を集めているように思えます。
そんな将棋、実は私も結構好きでゲームセンターとかでよく顔も見えぬ相手と対局したりしています。
も…もちろん、ちゃんと顔の見える人と将棋盤で対局する事もありますよ!年に1~2回くらい……
で、この前、テレビで将棋の対局を見ていると、ふとこんな疑問が浮かびました。「歩兵の裏側ってなぜ「と」なの?」と
ご存知の方も多いかと思うんですが、将棋の駒って敵陣のマスに入ると、裏返してパワーアップさせる事ができるんですよ。「成る」って言うんですけど。詳しくは後述しますね。
普段、気にした事も無かったのですが、気になると調べずにいられなくなるものですよね。という事で今回は、なぜ将棋の歩兵の裏は「と」なのか?その理由や由来はなんなのかを調査し、その結果をまとめてみました。
そもそも将棋の駒の文字が持つ意味は?
将棋ってよく見ると、歩兵の裏側の「と」ってどういう意味?どころか、全ての駒の文字がどういう意味って感じですよね。
「歩兵」は分かりやすいですが、その他「金将」「銀将」「香車」「桂馬」とか、どういう意味っていう二次的な疑問が生まれてしまいました。
ただ、歩兵の裏側の「と」の意味を知る上で、これらの駒の意味を知っておく事は、なにかと重要だったりそうじゃなかったりとか。というのも、将棋のあれやこれやを調べてみた結果、将棋は何かと歴史が深く、どれもこれも「諸説あり」でだったからです。要するに、必ずしもそういう理由とは限らないという事です。
その事を前提に、まずは将棋の駒の文字が持つ意味についてを見ていきましょう。
「王将」「玉将」の意味
「王様」「大将」と考えるのも決して間違えとは言えませんが、王将や玉将が持つ本来の意味は「宝玉」です。
今となっては、上位者が「王将」、下位者が「玉将」を使うというのが正規のルールとなっていますが、もともと将棋には「王将」など存在しなかったようです。
ちなみに、将棋の解説員さんなどは「王将」も「玉将」も「ぎょく」と呼んでいます。いつから「王将」が出てきたのかは不明ですが、一説によると豊臣秀吉が「玉ってなんやねん…ワシは王じゃなきゃ気に食わん!」と言ったからとかなんとか。
「金将」「銀将」の意味
将棋では、王を守るゴーレム的な存在ですが、金将や銀将が持つ本来の意味はゴーレムではなく単純に「金」と「銀」です。
なお、銀将は敵陣地に入ったとき、「金」に成りあがります。実際に書かれている文字は「金」ですが、主に「成銀」と呼ばれています。
ちなみに、銀将の駒の裏は「金」というより「全」という文字によく似ていますが、これはくずし字と呼ばれるもので、「金」を崩した文字になります。簡単に説明すると「色々と省略したり繋げたりして書きやすくした文字」です。詳しくは後述していますが、まぁ昔の文字ってイメージしてもらう感じで多分大丈夫です。
「桂馬」「香車」の意味
「桂馬(けいま)」は馬車、「香車(きょうしゃ)」は槍なんて意味があると言われる事が多々あります。
ですが、桂馬の本来の意味は「肉桂(シナモン)」、香車の本来の意味は「香辛料」です。
今となっては、スーパーでも手に入る品ですが、昔はシナモンも香辛料も非常に高価なものとして扱われており、これらは「宝物」に位置付けられていました。
なお、成ると桂馬は「成桂」となり、香車は「成香」となります。いずれも裏側は「金」ですが、くずし字なので一見して「金」には見えないというのが実態です。
ちなみに、香車の「車」は「馬車」などを意味しており、「どこまでもまっすぐ進める様」から「車」にしたとかなんとか。
そして桂馬の「馬」は、そのまま「馬」を意味しており、「跳ね回る馬のように勧める様」から「馬」にしたとかなんとか。両方とも諸説ありです。
「飛車」「角行」の意味
「飛車」には飛ぶように動く馬車という意味があり、「角行」は単純に”角に行ける”(牛車という説も)という意味です。
「飛車」と「角行」は元々は存在しなかった駒で、いつから将棋で使われるようになった駒か、その正確な年代は定かではありません。ただ、鎌倉時代において考案された駒とは言われています。
その為か、資産や貿易品の意味があった「玉将」「金将」「銀将」「香車」「桂馬」とは、まるで意味が異なっているそうです。
ちなみに、成ると飛車は「龍王」となり、角行は「龍馬」となります。
龍王は、その名の通り龍の王的な存在だったり、人間の姿した龍だったり、まぁ色々な姿がありますが一言でまとめるなら「神獣(神)」です。
龍馬は、身体が馬で頭が龍な伝説上の生物であり、一言でまとめるなら「神の使い」です。
「竜王」も「龍馬」も「この駒はめちゃくちゃ強いよ!」っていう意味を込めて付けた名前なんだとかなんとか。
歩兵の裏側はなぜ「と」なのか?その理由や由来について
将棋は、「将」なんて文字が使われている事から「戦(いくさ)」を模したゲームであると思われがちですが、実際には金や銀、シナモンといった資産や貿易品を取り合うゲームのようです。
なぜ「将」という文字が使われるようになったのかは不明です。将棋を愛した秀吉が戦国時代を生き抜いた事から「戦(いくさ)っぽいゲームにしようぜ!」としてそうなった説や、将棋の期限である「チャトランガ」という古代インドのボードゲームが戦争を模していた事から、それを参考にした説など、その理由は全く定かではありません。
では、本題行きましょうか。
先述した通り、将棋の駒には大体資産や貿易品系の意味がありますよね。そして成ると大体が「金」になります。
歩兵も「資産や貿易品を守る兵士」という意味(諸説あり)があり、成れば「金」と同じ動きをする駒になります。しかし、裏側に記載されているのは、明らかに「と」
一体なぜ「と」なのか?金となにか関係があるのか?どうしてそうなったのか?……調べてみた結果、「諸説あり」でした。
ただ、有力な説がいくつかあったので、ここからはなぜ歩兵の裏が「と」なのかを紐解く有力な説を紹介していきます。
「と」に見えて、実は「金」なんだよ説
将棋には、成れば金と同じ動きができる駒が4つあります。それが「歩兵」「香車」「桂馬」「銀将」です。
ですが、いずれも裏には「金」っぽいけど金ではない漢字が使われています。それは単純にくずし字が使われている為です。
くずし字とは、草書体ともいわれる漢字の書体の一つで、字を早くかけるように、字画が省略されたりしている文字です。
古書とかでよくみるうねうねした、現代人には到底読めないあの字が正に草書体です。
この事から、「香車」も「桂馬」も「銀将」も裏に記載されているのは「金」がくずれた(省略して書かれた)文字という事になります。
そして、歩兵の裏側の「と」も、そう見えるだけで、実は「金」をめちゃくちゃ省略したくずし字なんじゃないかというのが、この説です。
引用:木簡画像データベース・木簡字典』『電子くずし字字典データベース』連携検索
上記は「金」の草書体の中でも、かなり略された「金」です。時代や書く人によって草書体は異なってくるのですが、「金」がどんなに崩れても「と」にはならんだろ!というのが本音です。
ただ、一見して「と」と見える事から、現代では「と金」と呼んでます。
「と」に見えて、実は「今」なんだよ説
最も有力ではないか?と囁かれいるのは、歩兵の裏が実は「と」ではなく「今」のくずし字なんだよという説。
世の中には、意味は違えど読み方は同じという漢字がいくつか存在しています。「同音語」と言ったりもしますね。「川」と「河」と「皮」とかさ。
で、「今」と「金」も、両方「キン・コン」と読む事ができます。このような同じ読み方をする文字を、当て字に用いたり、同様の文字として扱う文化が昔の日本にはありました。
そんな文化からか、歩兵の裏を「今」と書いて「金」とし、それを崩して書いた結果、「と」になってしまったとの事です。では、なぜこの説がもっとも有力な説とされているのか?
それは、「今」のくずし字(草書体)が「と」に酷似しているからです。
引用:木簡画像データベース・木簡字典』『電子くずし字字典データベース』連携検索
金のくずし字が「と」になるのは、何となく無理があるような気がしますが、これなら何となく納得です。(もしかすると「と」に酷似した金のくずし字もあるかもしれないので、なんとも言えないのが本音です。)
じゃあなぜ、「香車」「桂馬」「銀将」は金のくずし字なのに、「歩兵」だけ「今」にしたのか……これも諸説ありました。
成った駒が全部「金」だったら見分け付きにくいから、数の多い歩兵はぱっと見判断しやすいように「今」にしたとか
歩兵は数が多くて「金」って書くの面倒だったから、画数が少なくて書くのが簡単な「今」のくずし字にしたとか、まぁ、色々説アリです。
「と」は「止」を意味しているんだよ説
止の略字は「と」である事から、歩兵の裏側は「止」を意味しているんじゃないか?という説です。
略字というのは、読んで字のごとく文字を略してかいた文字の事です。例を挙げれば「経」→「圣」とか、「働」→「仂」とか、正式な使い方ではないが「面倒だからこれでよくね?」とした文字ですね。
で、歩兵の裏を「止」の略字にした由来についてですが、歩兵の「歩」って「止」と「少」を合体した文字ですよね。そこから、一目みて「これは歩兵が成った駒だね」と分かるように「歩」の一部を取って「止」したとかなんとか。
ではなぜ、歩兵の駒だけ「金」ではなく、「止」の略字である「と」にしようとしたのか。それは歩兵の駒は沢山あるから、金って書くの面倒だし「止」の略字でよくね?「と」でよくね?という経緯があったなんて説があります。定かではありません。
まとめ
正直いって、なぜ「歩」の裏が「と」なのか?という理由より、「実は将棋って戦(いくさ)を模したゲームじゃなくて、宝物争奪戦を模したゲームなんだよ」っていうのに驚きでした。まぁ、諸説あるようですが。
将棋は歴史が深い分、まだ明確になっていない謎が多いようですね。今回の、「なぜ将棋の駒の「歩兵」の裏側は「と」なのか?」というのもそうです。
「実は「金」だけど、くずして書いてるから「と」に見えるんだよ」とか、「金と同じ意味で使われてた「今」をくずして書いてるから「と」に見えるんだよ」とか、さらには「実は「止」の略字なんだよ」とか、その答えは様々で、どれが正解かは定かではありません。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません