会社や個人を訴える方法は?誰に訴えればいいの?

社会

上司からのパワハラ、友人との金銭トラブル、夫婦間の亀裂、暴力、詐欺、窃盗……これらのトラブルを題材としたドラマや番組でよく聞くのが「訴えてやる!」という決め台詞。

大抵、この後に裁判が行われるのが一般的な流れなのですが、今回疑問に思ったのは「訴えてやる!」と言ってから裁判が行われるまでの過程です。

訴えると言っても、一体誰に訴えれば良いのでしょうか?弁護士でしょうか?警察でしょうか?

という事で今回は、会社や個人を訴える方法についてを調査し、その結果をまとめてみました。

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訴える方法について

個人、または会社との間で発生したもめごとに対し、それを審判するのにふさわしい機関へ申し出る際に「訴える」なんて言葉が使われます。

もし、あなたが誰かを訴えて法的に判定してほしいというのであれば、まずは誰かに訴えるまでに至った過程をしかるべき機関に訴えなければなりません。

まずは、その訴えるまでに至った過程を訴えるべき機関はなんなのかを見ていきましょう。

・民事事件の場合

民事事件とは、簡単に言えば一般民や一般企業との間で発生した一般的なトラブルの事を指す言葉です。

例えば、「友人に貸した金が返ってこない!返せ!」とか「会社から不当な解雇を宣告された!慰謝料よこせ!」とかです。

ちなみに、離婚や親権争いなどの家庭内トラブルも民事事件の一つなのですが、これらは「家事事件」または「人事事件」と呼ばれる事があります。

以上のような民事事件が発生し、「訴えてやる!!」となった場合の訴え先は「裁判所」です。

■どこの裁判所に訴えるか

民事事件に関するトラブルで相手を訴える場合は、裁判所へ申し立てる必要があるのですが、どこの裁判所でも良いという訳ではありません。

まず重要なのは、その事件を取り扱う事ができる裁判所であるかどうかという事です。

このように、各裁判所が取り扱える事件の範囲を「管轄(かんかつ)」とよび、例えば最寄りの裁判所に申し立てを行いたい場合でも、その申し立て内容が最寄り裁判所の管轄外であれば取り扱う事ができません。

更には、原則として訴える相手(被告)方の住む地域を管轄する裁判所である必要もあるので注意して下さい。(内容によっては申し立てた本人の住む地域を管轄する裁判所へ申し立てられる場合もある。)

民事訴訟の場合、主な裁判所は「地方裁判所」「簡易裁判所」「家庭裁判所」の3種であり、これらの裁判所が扱える事件の代表例は以下の通りです。

・家庭裁判所

家庭内トラブルに関するトラブル、いわゆる「家事事件」については、家庭裁判所が扱う事件になります。

例えば、離婚、扶養、遺産相続といった夫婦または親族間とのトラブル、血縁関係とは無関係に親子関係を発生させる「養子縁組」の許可といった家事事件を扱う事が可能。

ちなみに20歳未満の少年が犯した犯罪(少年事件)を扱うのも家庭裁判所が管轄しています。

・地方・簡易裁判所

その事件を申し立てる裁判所が「地方」か「簡易」かは訴訟の目的価額によって異なります。

この訴訟の目的価額が140万円以下だと簡易裁判所、140万円以上だと地方裁判所です。

例えば、原告が被告人に150万円を貸しており、訴訟でその150万円全額を請求する場合、訴訟の目的価額は150万円以上となるため、地方裁判所となります。

一方、訴訟の目的価額が140万円以下の場合は簡易裁判所が管轄しています。

■どうやって裁判所に訴えるのか

まず、裁判所へ訴えを申し立てる場合は「訴状(そじょう)」と呼ばれる書面を作成して裁判所へ提出する事が原則です。

訴状とは、簡単に言うと訴えの内容についてを記述した書面であり、訴訟(裁判)を起こす為には、訴えを起こす本人(原告)または訴訟代理人が管轄の裁判所へ提出するのが基本的な流れです。

ちなみに、簡易裁判所では典型的事案のパターンを想定して訴状の定型が何種類か用意されています。(訴訟の目的価額が60万円以下に限って起こせる「少額訴訟」など)

もし、訴えや請求内容が簡易裁判所で用意されている定型訴状のパターンとマッチしていれば、空欄や余白を埋めるだけで比較的簡単に訴状を作成する事が可能に。

しかし、地方裁判所では扱う事件が様々である為、基本的に定型訴状は用意されていません。

その為、簡易裁判所管轄の事件だか訴えの内容に沿った定型訴状がない、または地方裁判所管轄の事件で訴えを起こす場合はA4の用紙を用意し、自身で訴状を作成する必要があります。

勿論、訴状の作成は弁護士に訴訟を依頼すれば代理で作成してくれますし、訴状のみの作成を司法書士に依頼することも可能です。

訴状の書き方や記載事項などに関しては「裁判所の公式ホームページ」にて公開されていますので、自身で作成する場合はそちらを参考にするとよいでしょう。

■必要書類について

裁判所へ訴えを起こすに当たって必要となる書類は以下の通りです。

1.訴状

裁判所へ提出が必要な訴状の数は、訴える相手(被告)の人数+1となります。

例えば、訴えたい相手が1人の場合の訴状は2部、2人の場合は3部です。

1つは正本で、これは裁判所で保管する分、もう1つは副本で、被告人へ送付する分となります。

2.証拠資料の写し

証拠資料の写しも、訴状と同じく被告の人数+1となります。

訴状と同じ枚数を提出すればよいと考えておけばよいでしょう。

ちなみに、提出した証拠資料は返却されませんので、原本を提出するのはお勧めできません。(但し、証拠調査の際に原本の提示を求められる場合があります。)

3.収入印紙

収入印紙は、裁判所を利用するに当たって必要となる申立手数料の納付額となります。

訴状などに貼付けて納付するのが基本ですが、申立手数料が100万円を超える場合は、現金で納付することも可能です。

申立手数料は訴える相手(被告)に求める請求額によって異なりますので、訴えを申し立てる予定の裁判所へ申立手数料の額を問い合わせておく必要があります。

4.郵便料

郵便料は裁判所から原告および被告に書面を送付する際に必要となる額になります。

現金、または郵便切手で納付する事ができます。

現金の場合、郵便料として納めなければならない額は原告、被告が1名の場合で6000円、原告または被告が一人増えるごとに2000円が追加で必要となります。

郵便切手の場合は原告、被告が1名の場合で現金と同様6000円分、原告または被告が一人増えるごとに1072円分の切手2組が加わります。

内訳は「500円切手×8」「100円切手×6」「82円切手×10」「52円切手×5」「20円切手×10」「10円切手×100」「1円切手×20」です。

原告または被告が一人増えるごとに「500円切手×2」「52円切手×1」「20円切手×1」が2組加わります。

5.その他必要書類

・商業登記謄本、または登記事項証明書
原告または被告が法人の場合、商業登記謄本もしくは登記事項証明書の提出が必要となります。
これらの書類は本務局で取得する事が可能です。

・戸籍謄本
原告または被告のどちらか、または両方が未成年である場合は、その未成年者の戸籍謄本を提出する必要があります。
ただし、未成年者が未払給料を求めるといった、未成年者自身が訴えを起こす場合は除きます。
戸籍謄本は市町村役場にて取得する事が可能です。

・不動産登記薄謄本
被告に対して不動産に関する訴えを起こす場合、例えば建物や土地などの明渡しなどを求める場合などは、その物件の登記薄謄本を提出する必要があります。
不動産登記薄謄本は法務局で取得する事が可能です。

訴える内容などによって以上で挙げた書類以外にも提出を求められる書類が発生する場合もありますので、裁判所に一度問い合わせる事をお勧めします。

・刑事事件の場合

刑事事件とは、障害、殺人、窃盗、詐欺といった犯罪行為を行ったと疑われる者に対し、警察や検察が捜査を行い、裁判においてその者の罪の有無、どのような刑罰を科すかについてを判断する一連の流れを指します。

例えば、暴力の被害にあった場合、その暴力を行った者(被疑者)に処罰を求める為に訴えた場合は刑事訴訟へと発展するでしょう。

但し、暴力を被害にあい、その被疑者から治療費を請求したいという場合は民事訴訟となり、訴え先は「裁判所」となります。

以上のように、その被害によって損失した金額を請求したいという場合は民事事件、その被害の原因となる相手に対して処罰を求めたいという場合は刑事事件へと発展します。

■どこに訴えるのか

刑事事件で訴えを起こす場合も、民事事件と同じく裁判所へ申し立てる必要があります。

但し、刑事事件として裁判所へ訴えを起こせるのは「検察官」のみであり、検察官が訴えを差し出す事(訴えの提起)を「起訴」と言いいます。

以上の事からわかる通り、暴行や窃盗の被害にあった者(被害者)は、その犯罪行為を犯した者(加害者)に処罰を求めるべく、裁判所へ訴え(起訴)を起こす事はできません。

しかし、一般人である者が刑事事件の被害にあった場合、加害者の事を告訴する事はできますので、刑事事件にて加害者を訴えるというのは「告訴」を意味する事になると言えるでしょう。

告訴とは、捜査機関に対して犯罪事実の申告を行い、犯人の処罰を求める意思表示の事を言います。

被害者または法定代理人、被害者が亡くなっている場合はその配偶者、直径の親族・兄弟姉妹が告訴を行う事ができ、告訴ができる者を「告訴権者」と言います。

以上で挙げた告訴権者以外の者が犯罪事実の申告を行い、犯人の処罰を求める意思表示を「告発」と言います。

そして、犯罪の加害者へ処罰を求めるべく「訴えてやる!」と告訴・告発を行う相手は「検察官」「警察・司法警察員」となります。

■どうやって告訴・告発を行うのか

告訴・告発を行う場合、それに該当する処罰を求める意思表示、いつ誰が誰に対し、何をどのようにどうしたのかなど犯罪にいたる経緯、拝啓、事情、動機といった詳しい告訴事実などを記載した「告訴状・告発状」と言う書面を作成し提出する必要があります。

法律上、口頭での告訴・告発も可能としているようですが、実際に口頭で告訴・告発し受理してもらえる例はわずかですので、告訴・告発を行う場合は書面にて提出する必要があると考えてよいでしょう。

提出先は「実際に被害が発生した場所」「被害者の住所」「加害者の住所」のいづれかを管轄する捜査機関(主に警察、労働基準などに関するものは労働基準監督署)へ提出して下さい。

民事事件の訴えに対して提出する「訴状」と同様、告訴・告発状には決まった定型は存在しませんので、弁護士・司法書士に依頼するか、自身で作成する場合は弁護士事務所などのサイトより閲覧可能なテンプレートなどを参考にするとよいでしょう。

ちなみに、検察官が犯罪の被疑者に対し、裁判所へ有罪の判決を求める訴え(公訴)を起こす際に、被害者の告訴が必要となる犯罪「親告罪」に関しては、犯人を知った日から6ヶ月経過すると告訴できなくなり、これを「告訴時効」と呼びます。

親告罪の種類は様々ですので、実際に事件に遭い、告訴・告発を起こす場合は自身で調べるか弁護士へ相談してみるなどの対応が必要となります。

まとめ

今回の調査結果を簡単にまとめると、一般人または一般企業との間にトラブルが発生し、相手に対して何等かの請求を求めたい場合(民事事件)は「裁判所」へ訴え、何等かの犯罪に遭い、加害者へ処罰を求めたいという場合(刑事事件)は「警察」「検察」といった捜査機関に訴えます。

民事事件に関しては弁護士などの代理人に依頼せず、訴えを起こす者(原告)のみで訴訟(裁判)を起こす事ができ、これを「本人訴訟」と呼ぶのですがかなり面倒です。

一方、刑事事件に関して裁判所へ訴えを起こす者は「検察官」となりますので、被害に遭った者が裁判を起こす事は不可能です。

但し、告訴・告発を行う事で検察官に犯罪の被害者に対する罪の判決を訴える「公訴」の求めを行う事ができます。

余談ですが、法律関係は非常に奥が深く範囲も広い為、Web上の情報だけで人を訴えるのは至難の技であり、逆に訴えた本人が窮地に陥る可能性もあります。

その為、まずは法律関係のプロである弁護士へ無料相談などを行って不明点を聞くのがよいでしょう。

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