お酒を飲むと何故酔うの?そのメカニズムは?

生物

楽しい飲みの席でお酒を飲み、酔っぱらってテンションが上がったり、具合いが悪くなったり、記憶が飛んだりなんて経験がある人は多いのではないでしょうか?

人によって酒酔い時の状態は異なりますが、興奮状態になったり、頭痛や吐き気を感じたり、顔が赤くなったりする場合がほとんどかと思います。

お酒を飲むと酔うというのは、一般的に広く知られている常識的な事なのですが、なぜお酒を飲むと酔っぱらってしまうのかを詳しく知っている方は少ないのではないでしょうか?

そこで今回は、なぜお酒をのむと酔うのか?どういったメカニズムなのかを調査し、その結果をまとめてみました。

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飲酒によって与えられる体への影響について

飲酒によって引きおこる酔いの事を「酒酔い」と呼び、酒酔い状態時には興奮したり、具合いが悪くなったり、顔が赤くなったりなどの異常が体に生じますよね。

この飲酒によって起こる体の異常は、一般的に飲まれているお酒に含まれるアルコールの一種「エチルアルコール(エタノール)」と、体内でアルコールを分解する際に生成される「アセトアルデヒド」が原因です。

アルコールには、エチルアルコール、メチルアルコール、プロピルアルコールなどの多くの種類が存在しますが、一般的に言われているアルコールは「エチルアルコール(エタノール)」の事を差し、お酒の主成分である事から日本では「酒精」とも呼ばれています。

このエチルアルコールが体内に摂取されると、まず胃で20%、残りは小腸で吸収されて血液に溶け込み、その大部分は肝臓へ運ばれます。

肝臓に運ばれたエチルアルコールは、肝臓に多く存在する「アルコール脱水素酵素(ADH)」と呼ばれる酵素によってアセトアルデヒドに分解され、更に「アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)」によってアセトアルデヒドを酢酸に分解します。

酵素は血液に乗って肝臓から離れ、筋肉、心臓などほかの臓器でさらに分解され、最終的には炭酸ガスや水となって体外へ排出されます。

しかし、肝臓が一度に分解できるエチルアルコールの量には限界があり、分解できず肝臓を素通りしたアルコールはそのまま脳へと到達し様々な作用を引き起こします。

これは、アルコールを分解する際に生成されるアセトアルデヒドも同様で、分解しきれず血中で体内を循環することでアセトアルデヒドは体に異常をもたらしてしまうのです。

エチルアルコール(エタノール)による酒酔い

人間にとって非常に重要な臓器である脳には、血液に乗って脳へと運ばれる有害物質が、容易く侵入できないようバリアー的な働きをもつ「血液脳関門」が存在しています。

しかし、脂溶性(油に溶けやすい性質)の高い物質は血液脳関門を通過することができる為、脂溶性の高いアルコールは脳内へ侵入することができるなんとも厄介な物質です。(ちなみに麻薬という最強有害物質も血液脳関門を素通りできる)

血液脳関門を素通りし、脳内へ侵入したエチルアルコールは脳の各部位に麻酔作用をもたらし、脳内活動が低下します。

以上のような状態の酒による酔いを「エチルアルコールによる酒酔い」と言い、これは血液中のエチルアルコール量(血中アルコール濃度)の数値によって「ほろ酔い期」「酩酊期」「泥酔期」「昏睡期」の4段階に分けられ、それぞれの段階によって脳の機能低下具合いは異なります。

1.ほろ酔い期

血中アルコール濃度が0.05%を超えると、大脳新皮質の機能が低下し、「ほろ酔い期」へ入ります。

大脳新皮質は合理的な分析、言語機能、認識、読み書きといった活動を行っている部分であり、この部分がエチルアルコールの作用によって機能低下すると、その低下具合いによって思考能力や判断力が鈍ります。

更に、普段は大脳新皮質によって抑制されている「大脳辺縁系」が大脳新皮質の機能低下によって抑制が外れ、活発に働き始めます。

大脳辺縁系は食欲、性欲、意欲、睡眠欲、喜怒哀楽などの本能や感情をつかさどっている部位であり、ここの機能が活発化することにより、興奮状態となります。

「ほろ酔い期」であれば大脳辺縁系が少し活発化するだけなので、楽しくなったり気分がよくなったりする程度です。

2.酩酊期

血中アルコール濃度が0.10を超えると、小脳の機能が低下し、「酩酊期」へ入ります。

小脳がもつ主な役割は体各部の運動機能や平均感覚を調整する働きです。

走る、ジャンプするなどの大まかな動きや指先を使った細かな動き、まっすぐ立ったり、片足で立ったりなどのバランス調整といった様々な運動機能を調整しているのは小脳なのです。

飲酒後にふらついたり、千鳥足になってしまうのは小脳の機能低下による運動失調が原因です。

また、この時点で大脳新皮質の機能低下が進んでいるため、それに伴って判断力、思考力、大脳辺縁系の抑制力がほろ酔い期と比べて大きく落ちるでしょう。

飲酒時に大泣きした、暴れた、勢いで〇〇してしまった、上下関係構わず言いたいことをいってしまったなど、よく見るお酒の失敗例はこの「酩酊期」から見られ始めます。

3.泥酔期

血中アルコール濃度が0.30を超えると、海馬の機能が低下し、「泥酔期」へ入ります。

海馬の主な役割は脳の記憶です。

例えば、今日の出来事、学校で覚えた事、テレビで見た事など新しい情報は海馬に一度保管され、それを整理します。

そして、その整理した新しい情報を大脳皮質と呼ばれる、脳の外側に位置する大きな部分に貯蔵していくのが海馬の役割です。

お酒を飲んだ日の記憶が曖昧、または無いなんて事をよく聞きますが、それは海馬の機能低下が原因です。

また、この時点で大脳新皮質、小脳の機能は完全に麻痺している為、思考、判断、言動、運動、感情の抑制といった様々な機能が働かなくなります。

その為、「泥酔期」には何も考えられなくなる、意味不明な言葉を発する、立てなくなるなどの異常が現れ始めます。

4.昏睡期

血中アルコール濃度が0.40を超えると、延髄の機能が低下し「昏睡期」に入ります。

延髄は様々な働きがあり、その中には生命を維持するうえで非常に重要な呼吸運動、心機能などの機能も延髄によって行われています。

大量のアルコールを摂取することで起こる「急性アルコール中毒」も延髄の機能低下が原因であり、痙攣、呼吸困難、意識喪失などの症状が現れ始める。

最悪の場合は死亡してしまう事もあり、もはは「酔い」の領域ではなく「病気」の領域。

当たり前だが、この時点で脳全体の機能は著しく低下している為、発声、運動、思考、記憶の機能が働かなくなり、言動できなくなる。

アセトアルデヒドによる酒酔い

体内に摂取されたエチルアルコールが分解される過程で発生されるアセトアルデヒドは毒性が強く、血中蓄積量によって体の各位に様々な悪影響をもたらします。

エチルアルコールによる酒酔いは脳の機能を低下させるのが特徴ですが、アセトアルデヒドによる酒酔いは心臓や血管など体の各器官に異常をもたらすのが特徴的と言えます。

ただ、毒性の強いアセトアルデヒドを酢酸に分解する「アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)」の活性強度は個人によって様々である為、ALDHの活性が強い人はアセトアルデヒドによる影響を受けにくい人も存在しています。(所謂「お酒に強い人」)

アセトアルデヒドによって引き起こる体の異常は、主に以下のものがあげられます。

血管拡張

アセトアルデヒドには血管を拡張する働きをもっており、お酒を飲むと顔が赤くなったり、心拍数が上がったり、頭痛がしたりするのは、この血管拡張作用が原因です。

通常よりも血管が拡張すれば、普段見えにくい血液の赤い色が皮膚上に浮き出てくるため、体の各位が赤くなり始める。

特に毛細血管などが多く存在する脳付近の顔、心臓付近の胸などに血管拡張作用の影響が表れやすいようです。

また、血管が拡張すれば、血管の壁と血液の間に余裕ができる為、血圧は低下し始め、めまいなどの状態が引き起こります。

この血圧低下を防ぐ為に、心臓は拡張した血管に適した血液を送り出そうと心臓の動きを増やす働きを始めるので、飲酒中は心拍数が上がるのです。

なお、血管拡張によって頭痛が発生するのは、脳内の血管周辺に張り巡らされた無数の毛細血管が血管拡張によって刺激を受けてしまう為です。

嘔吐

嘔吐は、一般的に腐敗物、異物、毒素などを体内に摂取した際、それらを強制排出させようと脳内の「嘔吐中核」が刺激され、吐き気を促進し、その吐き気を抑制しきれなかった際に発生する。

アセトアルデヒドは体にとっては有害物質(毒素)である為、これが体内に摂取されれば当たり前だが嘔吐中核が刺激され吐き気を感じてしまうのです。

また、酔いとは別の話だが、嘔吐中核は精神的ストレスで刺激される場合も多く、お酒を飲む環境によって「吐き気」の度合いは異なると考えられる。(例えば上司との飲み、失恋後のヤケ酒など)

二日酔い

過度の飲酒により、翌日もなお頭痛、吐き気、眩まいなどが残ってしまうのは、アルコールが原因ではなく、分解しきれず血中に残留したアセトアルデヒドが原因です。

二日酔いの時点でエチルアルコールによる脳内麻痺作用は薄まっている場合が多く、ただ単に具合いが悪い状態が特徴的と言えます。

飲酒の翌日の頭痛、吐き気、目まいなどの原因は、上記でも説明した通りです。

まとめ

お酒によって興奮状態になったり、頭痛や吐き気が生じたりするのはお酒に含まれる「エチルアルコール(エタノール)」と、このエチルアルコールを体内で分解する過程で生成される「アセトアルデヒド」が原因です。

大抵の人は、エチルアルコールとアセトアルデヒドの影響を受けて酒酔いしますが、中にはアセトアルデヒドの影響をほとんど受けない酒酔いをする人も存在しています。

ただ、たとえアセトアルデヒドの影響を受けにくいとは言え、お酒の飲みすぎは危険です。

最悪の場合は死に至る「急性アルコール中毒」は血中アルコール濃度(アルコール摂取量)に比例して陥る症状である為、これに関してはお酒に強い弱いは関係ありません。

「俺はいくら飲んでも吐き気を感じないし、頭痛もしないから大量にお酒を飲めるぜ!」なんて油断してると……チーン

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