なぜゴキブリは頭を切断しても生きられる?

生物


しっかり対策をしているつもりでも、何故か屋内に侵入し、今まで多くの人を驚かせてきたゴキブリ。

グロテスクな見た目と不衛生な面から、一般的には気持ち悪がられる事がほとんどであり、大抵の場合ゴキブリは害虫扱いされています。

しかし、そんなゴキブリには非常に興味深い点がいくつかあります。

その一つが「生命力」です。

人間とは比べものにならない程の生命力をもっており、頭を切断されてもゴキブリは死にません。

人間と同様、ゴキブリも頭部に脳を備えており、非常に重要な部位である事は確かなのですが、なぜその脳がある頭部と身体が離れても生きる事ができるのでしょうか。

ゴキブリの生命力は神経の作りが鍵

人間の神経の作り

我々人間を含める哺乳類は、全身の制御を頭部に位置する脳でおこなっており、身体の内臓や筋肉は大量の「神経」によって脳と接続され、情報が伝達されています。

脳から内臓や筋肉などに神経が伸びている訳ですから、やはりその神経は束となって首に集中しています。

その神経の束が「脊髄(せきずい)」ですね。

ざっくり簡単にロボットで例えると、電源が「脳」、電源と各動力部を接続するコードが「神経」、そのコードが束となって密集している部分が「脊髄」という事です。ヒトの神経例え

以上のイラストから分かる通り、ロボットの各稼働部に情報伝達しているコード(神経)が束となっている部分(脊髄)を切断してしまえば、ロボットは動かなくなってしまいます。

その為、ちょっとエグいですが、哺乳類はこの脊髄がある首を切断されると、全身の内臓や筋肉などが完全停止し生命が断たれてしまうのです。

ゴキブリの神経の作り

ゴキブリは哺乳類と異なり、全身の内臓や筋肉などへ情報を伝達するのは脳だけではありません。

脳の他にも、ゴキブリは神経が集まった無数の「神経球(しんけいきゅう)」が体の各部に存在しており、その中でも大きな役割を持つ神経球は頭部に位置する「脳神経節」、腹部に位置する「食道下神経節」の二つに分けられます。

食道下神経節は、主に脚や内臓の一部に情報を伝達する事ができる「促進作用」をもっている神経球です。

ロボットで例えるのであれば、各稼働部を動かす電源が複数存在する形になります。

以上のイラストから分かる通り、頭部に接続された電源(脳神経節)のコード(神経)を切断しても、身体に接続された電源(食道下神経節)は生きていますので、ロボットの身体は活動を続行します。

ゴキブリもこれと同じですので、頭部が切断されても活動し続けるのです。

ゴキブリだって頭部は大事

ゴキブリの脳神経節は、正常に活動する為に欠かせない「抑止作用」を伝達する働きがあります。

この抑止作用が無いと、脚をどこまで動かすか、どこまで走れば止まるかなどの動きが不可能となる為、頭部のないゴキブリは縦横無尽に動き回る暴走モードに突入します。

「動く」以外の活動が制限されますので、食事をする事もできず、頭を切断されたゴキブリは暴走の末に「餓死」します。

ちなみに、個体にもよりますが、一般的によく見る「チャバネゴキブリ」は何も食べずに約2週間、「ワモンゴキブリ」は何も食べずに約40日間は生存するそうです。

まとめ

ゴキブリには、身体へ情報を伝達する脳と同様の働きがある「神経球」が体の各部に存在しています。

その為、頭を切断しても生き続ける事が可能です。

実は、この「頭を切断しても生きる」というのはゴキブリに限った話ではありません。

虫類全般は基本、体の各部に神経球がある為、カマキリもカブトムシも蝶もアリも頭部が切断されて即死するという事はありません。

しかし、頭部を切断されてから死に至るまでの期間は、やはりゴキブリが断トツで長いようです。