「クッキー」と「ビスケット」の違いって何?

歴史

小麦粉やバターを用いた焼き菓子と言えば「クッキー」が思い浮かびますよね。

一方、クッキーとよく似た洋菓子に「ビスケット」なんていうのもあります。名前が違うという事は製造工程に何か違いがあるのかな?と思ったのですが、ビスケットもクッキーも作り方に違いはありませんでした。

では、一体クッキーとビスケットの違いは何なのでしょうか。

そこで今回は、クッキーとビスケットについてを調査し、その結果をまとめてみました。

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クッキーとビスケットの違いとは

クッキーというのは「小さなケーキ」を意味する中世オランダ語の「koekje(クオキエ)」が語源となっており、北米にて「cookie(クッキー)」という英語に派生した言葉です。

一方、ビスケットと言うのは「2度焼かれたパン」を意味するラテン語の「biscoctus panis(ビスコクトゥス パーニス)」が語源となっており、それがフランスで「biscuit(ビスキュイ)」、ドイツで「Biskuit(ビスキュイート)」、イギリスで「biscuit(ビスケット)」と派生しました。

元々は長きに渡る遠征や航海用の保存食であり、保存性を高める為にパンを乾燥させてから再度焼くという工夫から「2度焼かれたパン」が誕生したそうです。ただ、文学者サミュエルジョンソンが編集した1755年初版の英語辞典によれば、遠洋航海用のパンは4度焼いていたとの事です。すいません、どうでもいいですね。

少し話が逸れましたが、クッキーとビスケットは違いは、国による呼び方の違いです。小麦粉やバターを用いた焼き菓子をアメリカでは「クッキー」、イギリスでは「ビスケット」と呼び方を統一しています。

ちなみに、アメリカにもビスケットと呼ばれるお菓子があるのですが、それはクッキーと製造方法が異なり、見た目の違いも歴然です。イメージとしてはスコーンに近いものとなります。

アメリカ式のビスケット
Wikipediaより

サブレ―やクラッカーもクッキー・ビスケットの一種

クッキーやビスケットに似た食品としては「サブレ―」や「クラッカー」なんかも挙げられますよね。

これらも、クッキー・ビスケットの一種なのですが、若干製造方法に違いがあり、それに伴って風味も異なります。

例えば、クッキー・ビスケットの場合は「バター1、薄力粉2」の割合で作られるのに対し、サブレ―の場合は「バター1、薄力粉1」と薄力粉の割合が少ない。その為、バターの風味が強くサクサクとした食感に出来上がります。

フランス語の「砂」を意味する「sabler(サブレ)」が由来となっており、食感が砂を連想させる事からきていると言われています。

一方、クラッカーもサブレー同様にクッキー・ビスケットの一種ではありますが、その原材料にイースト菌(強力粉)や酵素を使用しているという違いがあります。その為、クラッカーはパンに近い存在です。

また、クラッカーはクッキーやビスケットよりも塩味が強いという特徴があります。

日本のクッキーとビスケットについて

最初に日本へ伝来したのはビスケット。1543年にポルトガル人が種子島に漂着した際に伝わったとされています。

1855年には、長崎で医師をしていた柴田方庵の日記「方庵目録」「方庵雑話」にてビスケットに関する記述が登場し、現在の茨城県中部・北部を収めていた水戸藩からの依頼でオランダ人からビスケットの製造工程を教わり、その製造法を手紙にして送ったと書かれています。

ちなみに、柴田方庵が水戸藩へビスケットの製造方法を送ったのが1855年2月28日であった事と、ビスケットの語源「2度焼く」の2と8(焼)から、毎年2月28日はビスケットの日としています。

一方、クッキーという言葉が日本に伝わったのは戦後の話。戦勝国の援助などが理由で日本文化がアメリカ文化に染まるアメリカニゼーションによって伝わり始めました。

戦後の日本にはアメリカ文化を憧れとして見る者も数多く存在しており、現代の日本でもそれはあまり変わっていない。

そんな憧れからか、アメリカから伝わったクッキーは高級品、一方のビスケットは、当時「携帯食」として扱われる事が多かった為に安価な物というイメージが強かったようです。

要するに、その当時の日本ではクッキーとビスケットの違いは高級かどうかであるという間違った認識がされていたという事ですね。

日本のクッキーとビスケットの違いが定められる

冒頭でも説明した通り、クッキーとビスケットの違いは、国の呼称による違いであり、製造方法や味などには違いはありません。

ただ、戦後の日本ではアメリカから伝わったお洒落なクッキーを高級品とし、携帯食として扱われてきたビスケットを安価のものとして認識していました。

この誤った認識で発生してしまう問題は、安いビスケットをクッキーという名称で販売してしまう事で生じてしまう客の誤解です。簡単に言えば、安いビスケットでもクッキーとして売れば高値で売れてしまうという事です。

そんな問題を解決する為、1971年に全国ビスケット協会がビスケットとクッキーの違いを定める「ビスケット類の表示に関する公正競争規約」を実施しました。

これにより、日本ではクッキーとビスケットに以下のような違いが定義されたのです。(かなり長ったらしい規約だったので簡単にまとめました。)

■ビスケット
小麦粉や糖類、食用油脂、食塩を原料として他の原料も添加したもの混合機、生成機、オーブンなど用いて製造した食品

■クッキー
糖分、脂肪分の合計が40%以上のもので、手作り風に焼き上げた食品

まぁ、確かにクッキーって手作りしましたって外観のものが多いですし、一方ビスケットって機械で作ってますって外観のものが多いですよね。

「クッキー作ってみたんだけど」って言う人は結構いると思うけど「ビスケット作ってみたんだけど」って言う人いないですし・・・

なお、この規約はあくまで全国ビスケット協会が定めたルールである為、協会に加盟していない店がこれに従う必要はないようです。

まとめ

クッキーやビスケットは、小麦粉やバターを原材料とした焼き菓子の事であり、国によって呼び方が違います。

アメリカではクッキー、イギリスではビスケット。この2つの呼び方が日本に流れ込んできてしまった為に、同じ食品なのに違った呼び方があるという現象が起こってしまったようです。

要するに、クッキーはビスケットの事であり、ビスケットはクッキーの事、すなわち同じものという事になります。

ただ、一応日本では糖分、脂肪分の合計が40%のもので手作り風に焼き上げたものがクッキー、それ以外のものをビスケットとして定めています。

なので、手作りしたものはクッキー、そうじゃないものはビスケットと認識するのも間違いではありません。

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