親知らずは何のために生えるのか?抜いたほうがいいの?

生物

この前、右上の親知らずに虫歯ができてしまいました。

あまりに痛かったので歯医者さんにいったところ、「抜いちゃおっか!」という軽いノリで口の中にデカいペンチみたいなのを突っ込まれ、抜かれました…

正直言って痛くはありませんでしたが、あのグリグリとペンチで歯を抜かれる感覚は非常に気持ちが悪く、苦しいです。

そこでふと思ったのですが、食生活においては何の役にも立っていない親知らずって、何のために生えてくるのでしょうか?歯医者さんは「親知らずなんて早く抜いたほうが良い」と言いますが、本当に抜いてもいい物なのでしょうか?

そこで今回は、親知らずは何のために生えてくるのか、本当に抜いても良いものなのかを調査し、その結果をまとめてみました。

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そもそも「親知らず」とは

人の歯には、食べ物を噛み潰し、細かくするといった臼のような役割を持つ「大臼歯」と呼ばれる歯が上顎・下顎の左右奥の方に3本ずつ、計12本生えています。

簡単に言うと奥歯です。この奥歯のうち、最も奥に生えている歯こそが「親知らず」であり、大臼歯の3番目である事から、正式には「第三大臼歯」と呼ばれています。

通常であれば、人の歯は顎の成長に対応する為、6~13歳頃に小さい乳歯から大きくて丈夫な永久歯へと生え変わる。一方、親知らずは10代後半から20代前半に遅れて生えてくる歯であり、乳歯から永久歯へ生え変わるというプロセスが存在しません。

この事から、親(乳歯)を知らない歯という事で親知らずと呼ばれているらしいですが、諸説あります。

ちなみに、英語では親知らずをwisdom toothと言い、wisdomは「知恵」を意味します。これは、人間に知恵がついた頃(物事の判断ができる頃)に生えてくる歯である事に由来しています。その為、日本でも親知らずを「知歯」とか「知恵歯」なんて言ったりもするのです。以外に呼び名が多いんですね。

なお、冒頭では大臼歯は合計で12本生えると記述しましたが、親知らずが4本も生えなかった人、または全て生えなかった人というのも実は珍しくはありません。

親知らずは何のために生えてくるのか?

人間の身体に備わっているものは、何等かの役割の担っています。

では、特に無くても困らない上に、歯医者さんからも抜く事を推奨される親知らずは何のために生えてきてしまうのでしょうか?

この理由には諸説ありますが、最も有力とされている説は、人間の退化現象に大きく関係している事が今回の調査によって判明しました。

遡る事65万年~80万年前頃、この時代に生きる人類「ホモ・エレクトス(北京原人やジャワ原人など)」の食生活には「煮る」「焼く」といった現代では当たり前の調理技術が存在していませんでした。実際、ホモ・エレクトスの化石の歯の間には、加熱調理なしでは食べるのが非常に困難となる固い肉や根菜などが見つかっています。

そんな固い物を食べていたホモ・エレクトスの食生活において重要な役割を果たしていたのが、強靭な顎と親知らずの存在です。

固い物を食べる生活が日常化していたホモ・エレクトスは、顎が大きく発達しており親知らずが生えるスペースも十分に確保されていました。

ジャワ原人の頭蓋骨の模型
Wikipediaより

しかし、調理技術が発達するにつれて固い物を食べる機会が少なくなっていった人類の顎は、それに合わせて退化していきました。

鎌倉時代には、もう親知らずの全てが正常に生え揃う人が少なくなっており、現代では更に減少しています。

以上の事から分かる通り、親知らずは太古の昔に生きていた人の食生活に適応する為に生えていたものであり、柔らかいものを当たり前のように食べられる現代人には必要のないものになります。

親知らずを抜いた方が良いのはなぜ?

ご存知の方も多いかと思いますが、親知らずを抜いたほうが良いとされるか否かは、親知らずの生え方によって決まります。

正常に生えている方であれば抜く必要はありません。しかし、現代人の顎の構造では親知らずが生えてくるスペース十分に足りていないというケースがほとんどである為、それが原因で親知らずが横向きに生えたり、傾いて生えてきてしまう可能性が高い。中には顎骨に埋まった状態の「埋伏知歯(まいふくちし)」と呼ばれる親知らずが生えてくるパターンも存在しています。

このような状態の親知らずは、歯ブラシでの手入れが非常に困難となり、以下のようなリスクを引き起こす可能性もある為、抜いた方が良いとされています。

智歯周囲炎

親知らずが傾いて生えてきた場合、前の歯(第二大臼歯)との間に以下のような深いスペースがきます。

親知らずが歯茎に埋まり頭の部分(歯冠)の露出が少ない状態であれば、このスペースは更に広くなり、食べ物が残留しやすくなります。

親知らずと第二大臼歯の間に残留した食べ物を個人で取り除く事は困難であり、細菌が増殖しやすくなります。この細菌の増殖によって歯肉(歯茎)が炎症を起こす症状を「智歯周囲炎」と言います。

智歯周囲炎は食べ物の残留以外にも、噛み合わせの際に歯肉が傷ついてしまったり、埋没した親知らずの虫歯が歯茎に攻撃する事で引きおこるケースもあります。

親知らずが原因で入り込んだ細菌は、他の細菌感染症と同様に発熱などの症状があり、他にも開口障害や全身倦怠(とにかくだるい症状)を引き起こすようです。また、細菌が心臓付近に到達する事で死に至る事もある。

なお、智歯周囲炎は食べ物が残りやすい下顎の親知らずに症状が現れやすいようです。

虫歯の感染

傾いていたり、横向きになっている親知らずは、隣の歯と接触面積が大きい為に、一度虫歯になると、1本前の第二大臼歯にも虫歯を感染させてしまうリスクが高いのです。

特に親知らずは歯ブラシが届きにくい為、比較的虫歯になりやすい傾向にあります。その為、虫歯の感染が発生しやすく、最悪の場合は第二大臼歯も抜かないといけない事態になる可能性もあります。

歯並びがおかしくなる

顎の小ささが原因で無理に生えてくる親知らずは、第二大臼歯を押して出てくる事も多い為、歯並びが悪くなってしまう可能性があります。

特に、親知らずが上下どちらかのみに生えている場合は、かみ合わせが合わなくなってしまう可能性が高く、歯茎を気付付けてしまったり、顎に痛みを生じてしまうケースもあるようです。

矯正治療(歯並びを整える治療)を行った後も、親知らずが原因で歯列が崩壊してしまう事もある為、この場合は親知らずを抜いてしまった方が健全ですね。

まとめ

調理技術がまだ発達していなかった古代の人類にとって親知らずは、硬い食物を噛み切る為に重要な役割を担っていたようです。

しかし、時代が経つにつれて発達した調理技術によって日常的に硬い食物をかみ切る必要はなくなり、人間の顎は退化していきました。この人類の退化によって小さくなった人間の顎には、もう親知らずが生えるほどのスペースがなくなり、今ではで変な向きに生えてきてしまう役に立たない厄介者になってしまったという事です。

変な方向に生えてしまう親知らずは、歯ブラシが届きにくく、細菌にとっては絶好の増殖スポットです。その為、親知らず周囲で炎症が起こりやすく、隣の歯に虫歯を感染させやすい。体内に入り込んだ細菌は最悪の場合、人を死に至らしめる事も。

また、隣の歯を押してしまう親知らずは、歯並びを悪くしてしまう要因にもなり得てしまうようですね。とんでもない厄介者になったものです。

以上の理由から、親知らずは抜いたほうが良いとされているようです。但し、人によっては親知らずが正常に生えている人もいます。そういう人は親知らずを抜く必要はありません。うらやましいです。

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