年金はなぜ支払う必要がある?強制的に加入させられる理由は?

社会

国民年金とは、日本に定住する20歳以上60歳未満の方が加入する保険制度の事を言います。

世間一般的には「年金を払っていれば老後にお金を貰える」といった認識だと思います。一応他にも事故などで障害を負った際に支給される障害年金や、自分が亡くなったときに残された家族へ支給される遺族年金があるのですが、当記事は「年金について徹底解説!」とかいう内容ではないので詳しい内容は割愛します。

今回の本題は、なぜ年金は任意ではなく、強制的に加入させられるのか?です。年金の受給額は減る一方、払った額の全てが受給できる保障はないのに、なぜ毎月1万5千円以上もの大金を払い続けなければいけないのか。

そんな不満を抱える日本国民の為、年金はなぜ強制なのかを調査しその結果をまとめてみました。

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年金の歴史について、もともとは強制加入じゃなかった?

年金という制度は、1875年に軍人が退職した場合、または死亡してしまった場合において遺族に安定した生活ができるように支給される金銭「恩給」が始まりとされています。

もとは軍人を対象とした制度ではありましたが、後に公務員を対象として作られていた恩給制度を一本化し、1923年に「恩給法」が制定されたのです。

そして、1939年には海上勤務者(船員)の特殊性を考慮し、船員の生活の安定や幸福度の向上を目的とした「船員保険法」が制定されました。これが民間向け年金制度の始まりとなります。

その後、工業、鉱業、運輸業といった業務に就く男子労働者(いわゆるブルーカラーという奴ですね)を対象として1941年に「労働者年金保険法」が公布、1942年に実施されました。更にそこから年金の対象となる業種は幅広く拡大され、男性だけでなく女性も加入可能となり、1944年には「厚生年金保険」に改称されました。

ただ、この時点では会社員でも公務員でもない者、要するに自営業者などは年金には加入する事ができませんでした。そんな不公平な状態を改善すべく、1959年に国民年金法が制定。当初は厚生年金に加入していない高齢者を対象とした、保険料を徴収しない「福祉年金」として発足されました。

その2年後は自営業者や専業主婦でも加入ができる拠出制(保険料を徴収する)の年金「国民年金」が実施され、20歳以上60歳未満の方は誰でも年金に加入できるようになったのです。

この時点で現在の年金の内容と大差変わりは無いのですが、大きく違ったのは強制加入ではなかったという点です。

常時5人以上の授業員を使用する事業所、または法人、公共団体に勤める方は強制加入です。ただ、国民年金が適用される自営業、サラリーマンの配偶者、学生などの方はこの段階では任意加入です。

しかし、1985年には年金制度に大きな改正が加えられ、学生を除く20歳以上60歳未満の日本に住むすべての人は年金に強制加入となり、全国民共通の基礎年金制度が出来上がりました。厚生年金に加入している者は、この基礎年金に上乗せして支給されます。だから厚生年金は国民年金より支給額が高いんですね。

ちなみに。1991年には学生であっても20歳以上60歳未満で日本に住んでいれば強制加入させられる事になりました。

国民年金を強制加入にした理由はなに?

もともとは強制加入ではなかった国民年金。しかし、1985年の年金制度改革が行われた事で20歳以上60歳未満の日本に住む人は国民年金に強制加入する事となったのです。

この強制加入により、日本に住む全ての者は老後、事故によって生じる「働けなくなるリスク」が国によって保障される平等なメリットが生まれた訳です。が、この将来のリスクを保障してもらう為に毎月1万5000円以上を支払わなければいけないというデメリットもあります。厚生年金にも加入している者は2万円以上も支払う事になります。

定年から20年以上生きる人が珍しくは無くなった現代、人一人に支払われる年金は年々減少する一方。その反面で医療技術が急進する現代では、いずれ100歳以上生きている人も珍しくは無くなる人生100年時代が来ると言われており、そうなれば当然ながら年金受給額または受給開始年齢が引き上げられる事になるでしょう。

そんな現状で年金の強制加入に不満を抱く人が出てきても何ら不思議ではありません。現に結構いますしね、なんで年金はらわんといかんのよ!って嘆く人。

正直、自分でなんとかできるって自信がある人は年金に加入せず、不安って人は年金に加入する任意制にすればいいのではないかと、私も日々思っています。

それでもなお、国が年金を強制加入とする理由は一体何なのでしょうか?

年金を任意にすると生存権が成り立たない

生存権とは、日本国憲法第25条にて規定されている国民の権利の事です。

国民年金法によると、国民年金制度は生存権が規定されている日本国憲法第25条2項「国はすべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」という理念に基づき、国民の生活が不安定となってしまう事を、国民みんなで協力して、健全な国民生活の維持及び向上に貢献する事を目的としています。

ざっくり説明すると、国民の生活が不安定になってしまう事を国民みんなで強力して防止しようぜ!!っていうのが年金の目的ですね。

もし、この国民年金を任意にしてしまうと、年金を払わなくなる者が急増するのは目に見えてわかっています。そうなってしまうと、老後や障害を負ってしまった際に生活が困窮してしまう人が当然ながら出てきますよね。もし年金を払っていない者が死亡してしまった場合、遺族は苦しい生活を余儀なくされます。

もしこうなった場合、日本国憲法で定められた生存権は成り立たなくなってしまいます。

そういった事態を防ぐ為にも、国民が国民を支えられるように国民年金制度は成り立っており、これが強制加入であるからこそ、多くの国民は安定した生活が送れるのです。

年金を任意にすると現在の年金受給者が破綻する

年金は支払った額がどこかに貯蓄されており、受給が必要になったときに少しずつ返還されると考えている人が多いようですが、違います。

公的年金の場合は、支払った額が本人に支給されるのではなく、年金受給者に支払われる「賦課(ふか)方式」によって実現されています。簡単に説明するとあなたが払った年金は、どこかの高齢者に支払われているという事です。

公的年金を支払っている人は、あくまで年金を受給できる権利を得ているに過ぎないのです。

以上の事から、もし年金制度を任意加入にするとどうなってしまうかは分かりますよね?そう、現在の年金受給者へ支給する分の年金が不足します。

こうなってくると、当然ながら年金受給者の生活は困窮し、日本国憲法で定められた生存権が成り立たなくなります。

まとめ

年金というのは、日本国憲法で定められた生存権の理念に基づいて制定された国民年金法に沿って運用されている制度です。

その為、年金制度が任意加入となってしまった場合、生存権そのものが成り立たなくなってしまい、多くの国民の生活が困窮してしまいます。こういった事を防ぐ為にも、国民年金は強制加入としているのです。

年金の支払額が高くて辛いという人も多いでしょうが、それ以上に年金制度が支えとなっている人が多いのです。

とは言え、実は国民年金を支払っていないという人は意外にも多く、2016年度での納付率は66.6%、未納者は3~4割近くになっているようですね。これが原因かどうかは定かではありませんが、2018年1月には年金の強制徴収対象が13ヶ月以上の滞納者から、7ヶ月の滞納者に変更されるという発表がありました。

年金は強制加入ではありますが、どうしても払えないという人に向けて、免除制度や猶予制度が用意されています。

重要なのは将来よりも今ですからね。年金が原因で生活が困窮している方は、そういった方を対象とした制度を活用するのも全然ありだと思います。

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