防犯カメラの画質が悪いのはなぜ?

社会

ちょっと前の話だが、警察のドキュメント番組で流れた防犯カメラ映像をみてふと思った。

そういえば防犯カメラの画質はなぜ粗いのだろうか…と。

防犯カメラは、犯罪の決定的証拠を掴む防犯の代表的な道具なのだが、画質が粗ければ肝心な犯人の顔をしっかりと写す事ができない可能性があるのではないだろうか。

そこで今回は、防犯カメラの画質が悪い理由についてを調査し、その結果をまとめてみました。

防犯カメラの画質がわるい理由は肖像権?

防犯カメラの画質が悪い理由を調査した結果、もっとも多く目にしたのが「プライバシー権の侵害・肖像権の侵害で損害賠償を請求されるリスクを少なくする為」という理由でした。

ただ、この理由は間違っているという情報も幾つか目にしたので、まず初めに防犯カメラによるプライバシー権および肖像権の侵害について調査した結果を紹介していきます。

まず、プライバシー権についてだが、これは一般人・有名人問わず私生活をこれといった理由もなく公開されない権利を指します。

例えば、家での会話を盗聴された・盗撮された、実名公開されたなどがプライバシー権の侵害となります。

一方、肖像権とは他人から無断で撮影などをさせない、公開させない権利であり、プライバシー権の一部として位置づけられている。(要するに肖像権もプライバシー権です。)

例えば、盗聴はプライバシー権の侵害になるが肖像権の侵害にはならない、無断で撮影されてそれを公開された場合はプライバシー権の侵害にもなるし、肖像権の侵害にもなる。

防犯カメラについては、無断で撮影している上に犯罪がおこった場合は警察へ公開するという流れとなる為、プライバシーの侵害および肖像権の侵害になる恐れがある。

その為、防犯カメラの画質が悪い理由は「画質を落とす事で肖像権の侵害によって訴えられる可能性を減らす」というのが数多く見受けられた理由でした。

防犯カメラは肖像権の侵害にはならない?

いくら画質が悪いといっても、防犯カメラは近距離であればしっかりと人の顔を写し出す。

例えばコンビニの防犯カメラはレジのあたりに設置されている為、画質が悪いとはいえ会計をする客の顔はしっかりと写っている。

肖像権の侵害を防ぐ為に防犯カメラの画質を下げるのであれば「近距離で映る人の顔すらも写らない程の画質」で撮影する必要があるが、そんな防犯カメラを設置しているコンビニなど存在しません。

さらに言えば、防犯カメラは「防犯」を目的として設置しているカメラであり、その目的通りに利用していれば肖像権の侵害に抵触する事はない。

また、防犯カメラを設置している店では「防犯カメラ作動中」と撮影の事実を周知していたり、撮影のデータを定期的に上書き消去しているといった別の肖像権の侵害対策を行っています。

その為、肖像権で訴えられる可能性を減らす為に防犯カメラの画質を下げているというのは間違いと考えてよいでしょう。

ちなみに、いくら防犯目的とはいえ人の恥ずかしい姿を写す可能性のある私的空間(更衣室、トイレなど)、過剰な防犯カメラの設置は肖像権の侵害となる可能性があります。(撮影者側は裁判で訴えられ、カメラの撤去を余儀なくされた実例も存在しています。)

防犯カメラの画質が悪い本当の理由とは

上記で説明した通り、防犯カメラの画質が悪い理由はプライバシー権の一つ「肖像権」の侵害によって訴えられる可能性を減らす為というものではなかった。

現在では高画質な防犯カメラが販売されているのも確かですし、そういった防犯カメラで監視している店・施設も存在している。

しかし、やはり画質が粗い防犯カメラを使っている店・施設が多く、ニュースや警察ドキュメント番組などで流れる防犯カメラ映像は画質が悪く、色合いも悪い。

防犯目的で使えば違法とはならないのであれば、もっと高画質な防犯カメラの方が「防犯」として役立つはずなのに、そうしない店や施設が多いのは以下の理由が挙げられます。

新しい防犯カメラ導入のコスト問題

高画質の防犯カメラは1つ4~5万円、それを録画するレコーダーは10~15万円、そのカメラやレコーダに適応した液晶モニターは1~5万円、更にカメラを取り付ける工事費は10~15万円。

コンビニなどの小型店舗でも防犯カメラを約4台ほど設置しており、その事から考えると高画質な防犯カメラを導入する為の金額は37~55万円ほどかかります。

外部の人が入る事すら許されないセキュリティーガッチガチに固めた大手の企業などであれば、顔認証システムなどの機能がついた高性能高画質監視カメラなどを導入している場合が多いでしょう。

ただ、コンビニなどの店舗では防犯カメラがあるだけで大きな犯罪抑止力に繋がる為、「防犯の為に高画質な防犯カメラかうで!」と踏み切る人はほとんどいないと言っていいでしょう。

ましてや、犯罪が頻繁に起こっているという訳ではない店舗で防犯カメラの映像が活躍する可能性は極めて低く、高画質防犯カメラに払ったコストに見合った活躍は期待できないという事です。

低画質だろうが高画質だろうがその防犯カメラの存在が持つ犯罪抑止力は変わりません。

ようするに、わざわざコストをかけずに昔から使っている現状の防犯カメラを維持しているというのが、防犯カメラの画質が悪い理由の一つです。

防犯カメラの映像を記録するレコーダーの容量の問題

当たり前だが画質が高ければ高いほど、その映像がもつサイズは大きくなります。

防犯カメラというのは基本営業時間は常に録画しており、24時間営業などのお店ではその映像のサイズは多大なものになる事は容易に検討がつきます。

例えば、画質を優先した防犯カメラ4台の映像を1日中録画した場合は約300GB、1週間では約2TB、1か月ともなると8~10TBもの容量が必要となる。

店にもよるが、防犯カメラの保存期間は1ヶ月程、たとえ1週間程度の保存期間だとしても最低2TB以上のハードディスクが必要となるでしょう。

できれば防犯カメラの映像は1ヶ月ほど前のものを残しておくのが望ましいので、低容量で長期の映像を保存する為に画質を落として節約しているという事です。

ちなみに、防犯カメラの映像をテレビ番組などで見た人はわかるかもしれませんが、防犯カメラの映像って動きカクカクしている事が多いですよね。

あれは画質だけではなく「フレームレート(FPS)」も落として撮影している為と考えられます。

動画というのはパラパラ漫画みたいなもので、静止画を連続させて動いているようにみせています。

その動画が1秒間で何枚の静止画を連続させているかというのが「フレームレート(FPS)」です。

1秒間に30枚の静止画が連続すれば動きはスムーズになりますがその分サイズは大きくなり、逆に1秒間に5枚の静止画が連続すれば動きはカクカクしますがその分サイズは小さくなるという事です。

まとめ

防犯カメラの画質が悪い理由について、「プライバシー権(肖像権)の侵害によって訴えられる可能性を減らす為」という回答が多いようですが、画質が低くても顔が写ればプライバシー権の侵害です。

正当な理由、すなわち「防犯」を目的としてカメラを設置する事は法律てきに問題はありませんので、上記の理由は間違えと考えてよいでしょう。

防犯カメラの画質が悪い理由は法律の問題ではなく、高画質防犯カメラの導入コストと映像を録画するハードディスクの容量の問題が理由です。

別に高画質の防犯カメラを設置したっていいんです。ただその代わりにお金がかかるし長期間の映像を録画する為には大容量のハードディスクが必要だよって条件がつくだけです。

さて、この条件をのんでまで高画質防犯カメラを設置しようと思うお店および施設などの責任者さんはどれほどいるでしょうか。